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まさにうすのだいありー

日記。つらつらと不定期に書いていきます。

『そこのみにて光輝く』−女性も光輝く時代?

 物語の内容は正直「ふーん」という感じでした。絶望の中でもがき続ける若者たちを描いたストーリとでも言えばいいのでしょうか。決してハッピーエンドではないけれど、ラストで微かに感じる希望(と言ってしまって良いのか分からないけれど)に少し安心する、そんな物語でした。おそらく物語そのものよりも綾野剛さんと、池脇千鶴

ん、そして菅田将暉さんら主要キャストの演技に注目すべきだと思います。暗い過去を背負いながらも、そこから抜け出し、一人の女性を幸せにしようともがき続ける達夫(綾野)。そして元夫との関係や父親の介護に悩まされながらも、一人の女性として強く生きる千夏(池脇)。最後に、千夏の弟である拓児(菅田)。三人の演技は本当に素晴らしかったです。特に拓児演じる菅田さんの演技は作中、暗い雰囲気の物語の中で一際目立っていました。

 さて、本作ではテーマの一つとして「貧困問題」が語られていました。少しそれについて掘り下げてみようと思います。池脇さん演じる千夏は、海?川?沿いのボロボロの平屋に住み、昼は魚の加工工場、夜はスナックのホステス、さらには売春を行いながら両親と弟を養っています(弟は千夏の元夫が経営?している会社で日雇い労働者として働いているようです)。(おそらく)身体が動かない父親の介護のために母親は働いておらず、家計のほとんどを千夏の収入でまかなっているような状況です。千夏ら家族が置かれている環境は想像以上に過酷であり悲惨です。

 ここ数年「貧困」という言葉が新聞やテレビで報道されていますが、千夏たち家族が置かれた状況もおそらくそこに入ると思います。あえて千夏を中心にこの問題を考えてみると「女性の貧困問題」が浮かび上がってきます。

 例えばインターネットで「貧困 女性」と検索すれば女性の貧困をテーマにしたウェブサイトが沢山表示されます。以下のサイトでは貧困に喘ぐ女性をテーマにした記事が掲載されていました*1

 では、このように取り上げられている女性の貧困問題は現実的に(例えば数値化した場合)日本社会でどの程度広がっているのでしょうか。

 内閣府男女共同参画局が発表している「平成22年版男女共同参画白書 概要版」がその詳細を明らかにしています*2

 資料は男女共同参画に関する様々なデータが掲載されています。今回のテーマである貧困に関するもの以外にも、就業や社会進出、政策決定における女性の現状を表やグラフで分かりやすく示しており、とてもためになります。割愛しますが、色々なデータを見比べてみるのも面白いし、新たな発見があるかもしれません。

 例えば「第一部 男女共同参画社会の形成の状況 第5章 生活困難な状況に置かれた男女の状況」は大変参考になります。ここでは貧困+社会生活を送る上で困難な状況にあることを示す概念として「生活困難」という言葉を用いています。

 

第23図 男女別・年齢階層別相対的貧困率(平成19年)

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 図は男女別・年齢別の相対的貧困率を表したものです。ここで注目すべきは20~24歳を除くすべての年齢で、相対的に見て女性が男性より貧困な状況に置かれていることです。また、次の図は年代別・世帯別に見た場合の女性の貧困率の高さを示しています。

 

第24図 年代別・世帯累計型相対的貧困率(平成19年度)

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 驚くべきは勤労世代(20~64歳)における母子世帯の貧困率の高さでしょう。客観的条件は同じであるはずの父子世帯との差は歴然です。夫婦の場合の貧困率の差がほとんどないことを鑑みると、何らかの理由で女性が家計を背負うことになった場合、男性に比べて社会的、経済的に不安定な状況に置かれる可能性があります。

 世間では「1億総活躍社会」や「女性の時代」など女性の活躍を後押しする言葉が飛び交っていますが、このようなデータを見ると、中身のない空虚なスローガンに思えます。言うのはただです。ただし発言したことを実行できない場合は恥をかきますし、責任を取らねばなりません。現実には厳然たる格差が存在します。まずは認識するところから…などと悠長なことは言ってられません。変えられるところからすぐに変える。それが一番の打開策だと思います。

  

そこのみにて光輝く

そこのみにて光輝く